Reconsideration of the Theory about so-called "Junsoku" Fishing Associations

社会学における漁業組合研究の多くは，1901年に我が国最初の漁業基本法として制定された，いわゆる「明治漁業法」に準拠して，全国の漁村に遍く設立された漁業組合を対象として考究されてきた。漁業法の制定に伴い設立された漁業組合は，その組織構造と機能において全国統一・画一的であり，言わば定型的組織形態であったと言えよう。しかし，漁業法制定以前に設立をみた各種の漁業組合については，実態把握の欠落からその実相は不透明であり未解明な部分が余りにも多く，したがって，各種の漁業組合についてもさまざまな見解が示されてい る。なかでも，1886年に公布された漁業組合準則によって設立された，いわゆる「準則」漁業組合については定説と言えるものは見い出せない現状であり，見解が分かれるところである。 かつて，筆者は三陸漁村（岩手県沿岸部）に設立された31の「準則」漁業組合について，「準則」漁業組合の類型化を試み，分析視角として明治政府の政策・統制と漁民の生産・生活防衛との対応関係を検討する事によりその実相の解明を試みた。 本稿では，三陸漁村の事例研究において解明された成果を整理し，「準則」漁業組合に関する主要な先行研究の諸成果との比較を通じて「準則」漁業組合（以下，準則組合と略す）の集団的性格について再検討することを課題としている